薄紅天女
荻原 規子
阿高に会いたくて、会いたくて、ただひたすらに会いたくて、勾玉三部作を手に取ったのはすごい久しぶりです。だから、今回は、平安から神代まで時間を逆行して行こうと思います。
初めて読んだときから10年経っても、いまだに美しく輝き続ける、大切な大切な物語です。
読むたびに、わたしは再び還れる。とろとろに融けて、文字の中に消えて、世界の一部になれる。いうなれば、暑いから魚になりたかった稚羽矢みたいなもんです。まあ、大きく異なってしまうんですけど、とろりと自分の輪郭を持ったまま消えて、紛れ込む感じ。わたしは、蝦夷の地での森となり、都での木々であり、彼らが存在する世界の空気になる。
そんなふうに思えるのがすごく好きです。物語はわたしの中にあり、わたしの外で展開する。
色あせない綺麗な話です。ああ、愛しい。
そういうわけで、久々の勾玉三部作。たくさんの本を読んできたけれど、児童文学って言うのは離れていく人の多い作品だとも思います。大人になると、自然に知っている漢字は増えるし、妙なところでひらがなって言うのに違和感を覚えるしね。
でも、色あせないのが勾玉三部作!
薄紅天女は、ほとんど阿高と藤太の話と言っても過言ないでしょう。大部分は、阿高と同じに見られる『ましろ』ことチキサニについて説明されていますからね。
ソレを考えると、白鳥異伝の二人よりも恋愛的な意味で急展開、空色勾玉よりもラブロマンス要素は落ちます。代わりに、素朴な愛しさが溢れてくる。
苑上の矜持の高さは皇族として誇っていいでしょう。彼女は紛れもなく皇族で、しかも苑上は圧に負けないだけの逞しさとしなやかさを持ってる。阿高のツンと澄ました脆さを彼女が支えていけるならいい。
『決めた?』のシーンは何度読んだって、あんちくしょうめっ!!!と思わずには居られない。
わたしだって、阿高についていくぅぅぅぅぅう!!!!
ああ、わたし、二連の婚儀はきっと一緒に行われたと思うの。
千種を迎えに行くのは至難の業だと思うけど、藤太は絶対成し遂げる。阿高を連れて還ったし、阿高には苑上がいる。なんだかんだと苑上は相手を言い負かすのは得意そう。
二連なら知略で相手を落としそうだけど、苑上は真正面から挑んで、正々堂々と勝ちそうな気がする。小細工なんてしなくても、真っ直ぐに勝てると思う。それが苑上だと思っているんだけど、どうかしら?(笑)
で、彼らの子どもは絶対に仲がいいと思う。一緒に遊んで、一緒に馬を駆り、一緒に機を織り、将来、絶対いい伴侶を見つけると思う。
藤太は娘なら、嫁に出すのを渋るだろうし、阿高なら表に出さないまでも相当嫌がって、苑上になだめられるんじゃないかしら。代わりに、男なら嫁の一人でも堂々と掻っ攫って来れないでどうする!くらいの勢いになりそうな気がする。
すみません…妄想でした。
そういえば、時代を逆行しているせいで細かいところがうろ覚えなんですが、竹芝が皇の血を引いているといわれるのは、小倶那かしら。遠子の故郷は失われてしまった、小倶那は還らなかった。とすれば、居つくし、それが竹芝かしら。
加えて、竹芝の勾玉は『明玉』。これは三野の勾玉、明姉さまのものよね?
くぅぅ 全てのなぞを思い出すためにも、早く時代を逆行するぞ!!
鳥彦にも会いたいんだ!!!!『風神秘抄』で鳥彦王が出てきたときから、ずっとずっと会いたくなってたの!!!