僕の心臓を盗まないで (角川文庫)
テス ジェリッツェン
本屋で目に付いた小説を、片っ端からメモり、図書館にあるのを片っ端から借りてみました。
その一端です。
テーマは臓器移植。それにまつわる、ビジネスと倫理問題とか、そんな感じです。
出だしが、ヤーコフというロシア人の少年で、彼が中心をなすのかと思いきや、そんなことはない!
寧ろ、中心はアビーという研修医です。あ、あれ?そんな人は、後ろの紹介に載っていた…?と思ったら、しっかりいました。
でも、紹介文的には、二人の出番は半々だと思っていたので、拍子抜け。
チィィッ!
長い間、日本人の作家のテンポになれていたので、久々の外国小説は、慣れるまでに時間がかかりました。テンポが違うんですよ。日本の展開と、アチラの展開は違う。日本の小説が、一つのことを中心に、放射状に話が広がり、再び終結するような印象を受けるのに対し、海外だと、放射状に広がった物語が一点を目指して集結し、帰結していくような印象を受けます。
帰結の仕方が違うのですよ。なんとなく。
で、読み終えてから思ったんですが、この話は明確な終わりがないんですね。
臓器売買がテーマですが、それが無くなったとも、まだ存在するとも書かない。ただ、金持ちにも貧窮しているものにも、同じように病は降りかかり、生かそうと必死になっても、死に行くまでのわずかな間、側にいることしか出来ない。と語っているように思えました。
主眼はそこだったのだろうか?と問いたい気分でした。
医療サスペンスに思えたのに、最後は人情なの?どうにも、最後が納得しきれない結末でした。
ミステリなのにトリックはSFとか、ホラーなのにサイコみたいな、そんな感じです。
それでも、海外テンポに慣れてしまえば、読みやすい小説でした。
初速を落とさずに進めるので、一読する価値はあると思いますが、わたしにはどこに重きがおいてあるのかわかりませんでした。
命の重さを訴えたかったの?臓器売買はいけないことだと訴えたかったの?医療サスペンスにしたかったの?
タイトルはもともとの『命の収穫』の方が好みでした。