月に繭 地には果実〈上〉 (幻冬舎文庫)
福井 晴敏
ふくいぃぃぃぃぃぃ!新刊はガンダムかよ!!!
と言ったことがあるのを覚えています。ええ、ガンダムってキャラ萌アニメで、クオリティは高くないと思っていましたが、あれ、小説はなんだか楽しいよ?
普通に満足して読了しました。
おかしいな、わたしが知っているガンダムは、現実の戦争と同じで、見ていると、ダラダラと帰結する先は共倒れって言うか、喧嘩両成敗って言うか、結局全滅じゃないか!という印象だったんですが、両方全滅にもかかわらず、なんだか満足できる。
と思って、実際のアニメの公式サイトに行ってみたら、なんか違う。
全体的なストーリーが、絶対違う。小説では早々に死んでしまうキャラが、明らかに最終回まで生き残っていたり、そこここに不可思議が漂います。
もしかして、これって、『ターンAガンダム』が楽しいのではなくて、福井晴敏が面白いのかもしれない。そんな疑念に駆られます。そして、否定する要素がどこにもない辺り、これは愛の成しえる技かもしれないと思うわけです。
時間が経って、それなりにターンAの世界を消化しました。
大雑把な展開は、前文明の高度な科学力を引き継いだ月の人々・ムーンレイスと、前文明の科学力を忘れて生活する地球の人々がいることを前提に、地球への帰還を望むムーンレイスが地球に降り立つ。けれど、地球の人との圧倒的な科学力の差と、同じ人類と認められない地球人との間での、地球帰還は難航する。
そうこうしている間に、前文明の遺産というか、ようはガンダムが発見されて、地球帰還を侵略とみなす地球人と、それに対抗するムーンレイスの戦争に発展する。
同時に、地球も月も一枚岩とはいかず、戦争が激化していく中、その戦火は地球を離れ、宇宙圏、月にまで飛び火する。
結果的に、地球では前文明の遺産であるガンダムというかザクやら核兵器やら生物兵器やらで、地球環境が崩壊する。月は月で諸刃の剣であったモビルスーツだとかビームを使って打撃を食らう。
両者とも戦争を指導する支柱を失ったことで、帰結。的な感じでした。
いや、しかしですが、小説読んでいると、ハリー大尉とか良い男ですよ?ディアナ様とか、立派な方ですよ?
え?主人公?え?ロラン?女装が似合う、同性愛者にうっかり一目ぼれされちゃった美少年ですよ。失礼しました、美青年ですね。
まあ、ガンダムというのは、どこに視点を置いてみるかによって、感じ方が変わるという、面白い作品だとは思います。
地球サイドに立って考えてみれば、突然やってきた宇宙人が、わたしたちも地球に住みたいから土地を寄越せ。はむかうなら、この武器使っちゃうよ?と脅されていると感じるのでしょう。
逆に、月サイドにしてみれば、地球帰還作戦をするって2年前から言ってるんだから、早く土地とかすんなり頂戴よ。元々は、同じ人間じゃないのよ。なのでしょうね。
どちらが正しいのか、考えさせたい作品なのか、問題だけ投げつけて、最終的に全てを放棄する作品だと思っています、ガンダム。
ヒューマンドラマではあるけれど、で?って感じになります。
彼は死んだね、彼女も死んだね。それでも、人は逞しく生きていくのだと言いたいの?
それとも、戦争なんていうのは意味がないから、してはいけないよ。といいたいの?
人は所詮、自分と同じもの意外は認められないから、いつでもいつまで経っても、醜怪な生き物だといいたいの?
論点が見えないという点で、わたしがガンダムシリーズが好きではありません。
まあ、元々はアニメなのだから、それでも良いのかもしれませんね。
とりあえず、小説は楽しかったです。
楽しかったという思いがあるから、アニメは見ません。