この作家のタイトルの面白さに引かれて借りてみました。
どうやら、これが一番最初の作品のようだったので、新世界。
わたしの中で新世界といえば、長野まゆみの記憶が強烈なんですけれども、あんなエロティックな要素はありませんでした(笑)
考えてみれば、あんなにエロティックな作品を中学生が読んでも良かったんでしょうか。
どちらかといえば、異性愛より同性愛に偏った作品だったと思いますけれども…、ああ、だから、わたしは迷いなく腐女子へと走ったわけですね。納得です。
そして、新世界。
話の舞台は、第二次世界大戦の末期というか、終わった直後(日本降伏後)のアメリカでの話。
日本では今なお、その恐怖が語り継がれる原爆の開発に関わった研究者達の話です。
といったら、なんだか奮闘記のように聞こえますが、奮闘記ではありません。奮闘すべき時間は過ぎ去って、そこで起きた殺人事件を追う、ミステリです。
ミステリなんですが、そんなに本気で犯人探しはしていません。
推理ものともまた違う感じ。
何度も、時間軸が変わり、未来へ過去へと飛び去る展開は、少し不思議。本当に犯人探しをするつもりがあるの?
更には、原爆への科学者への苦悩が書かれていて、これまた犯人探しをするつもりがあるの?
最終的に、ちゃんと犯人は捕まるわけですが、ちょっとわたしはしっくりこない。こう、消化不良な感じがするのですよ!
最終的に、タイトルの指し示す『新世界』とは何か、というのが主題だったんでしょうか。
原爆を正気で造ったという科学者達は、実は狂気に囚われていたのではないか。
命令されるがまま原爆を落とした兵士が、その罪の意識から狂気に走ったのではなく、彼はどこまでも理性的だったのではないだろうか。
まあ、真実は闇の中。
新世界の幕開けは、一体どこにあるのでしょうね。
たぶん、日本に取っては、第二次世界大戦が終わったときに開いたものでしょう。きっと。