|
評価:
---
---
---
()
|
恩田陸の『メガロマニア』で触れていた本です。
1つの生物が絶滅すると、そこからなし崩しにすべてが滅亡へと向かうお話。そうメガロマニアには書いてありましたね。
なるほど、その通りですね。
発行は1998年、そのころにすでにこのような話があったことに驚きを隠せません。
特に、最後に付け加えられている作者あとがきのようなリアリティチェックを読んでいると、本当に驚くばかりです。
一定の水準を超えた科学は魔法だとありますが、まさに。もしくは、預言なのでしょう。
テクノロジーを生きる今、科学者は預言者なのかもしれません。
物語は最初、1つの街が死に絶えたことから始まります。
原因はダニの大量発生かつ食性が肉食に変化したことという大変ショッキングな内容です。
そして、このダニの『ダスト』と名付けます。そう、タイトルですね!
なぜ、大量発生したのかそれを探っていくうちに、各地で様々な異変が起こっていることが判明していくのです。
大量発生したのはダニだけではないこと、むしろ大量発生の裏側には大量の昆虫の死滅が存在していること、生命が複雑に絡み合っていることがわかるくだりです。
アリとハエがいないだけで自然が一気に崩壊に向かうなんて誰が想像したでしょう!
わたしは昆虫から遠ざかって久しく、見ると逃げ出してしまうので全然気が付きませんでしたし、作中の一般人たちも虫がいなくてラッキー程度にしか思っていませんでした。
虫がいなくなったことによる食物連鎖のヒエラルヒーの崩壊は一気に進み、人間を直撃していく様はあり得ないと一刀両断するには現実に近すぎて恐ろしかったですね。
だって、ミツバチが少なくて受粉が困るというニュースを見たことがあるじゃありませんか。
生きるということの基盤が崩れ去ったときの人々の混乱と狂気と希望。
わたしなんかはあっという間に騙されてしまうので、ジェリー・シグモンドの傘下に下ってしまいそうです。
多数の登場人物がおり、それぞれの話をいくつも見ていると、立ち向かう者、流れに乗る者、成り行きに任せるもの、ともに朽ちてしまう者のすべてを見ることができます。
志半ばで朽ちていった人のためにも、生き抜いた人々には頑張ってほしい。
各個人の話が最後にはあらゆる伏線として機能していくところも大変に美しかったです。
最後に、この人が琥珀の中からDNAをって話で映画『ジュラシックパーク』ができただなんて知らなかった!